Vol.67 May/Jun. 2021

Vol67_hyoshi特集◎「自由で開かれたインド太平洋」の新展開
「勢力均衡」復活のバイデン政権アジア政策
-日米首脳会談で明らかになった同盟再強化・アジア関与の継続

コロナ禍を押して行われたバイデン・菅会談。同盟再強化、台湾への関与など強いメッセージの裏にはデリケートな配慮も。首脳会議の意義を読み解いていく。
中島健太郎(読売新聞)

鼎談
クアッド 「平時の協力」の有効性
にわかに注目を集める「日米豪印」だが、現実の秩序形成にどれだけ影響を与えられるか。
過大評価を排し、機能的協力を進め、着実な成果を積み上げることが求められる。
伊藤 融(防衛大学校)
            佐竹知彦(防衛研究所)
            森 聡(法政大学)

「日米韓」は立て直せるか-バイデン外交と「インド太平洋時代」への課題
「負のリンゲージ・ポリティクス」の日韓関係。米国はトランプ政権から関係修復に注力したが、バイデン政権はさらに強力なてこ入れを図る。日米韓を「負債」から「資産」にリバランスさせ、インド太平洋を「協調の海」にできるか。
阪田恭代(神田外語大学)

強まる米国の台湾への関与-バイデン政権にとっての戦略的重要性
バイデン政権は、民主主義の価値を共有する台湾との関係重視の姿勢を鮮明にしている。地政学のみならず経済安保の側面でも、
米国にとっての台湾の重要性は著しく高い。戦略図の中での台湾の位置付けとは。
村上政俊(皇學館大学)

欧州のインド太平洋戦略の発展-安全保障協力の新段階
欧州各国のインド太平洋への関心は、最近、安全保障面にも拡大している。主軸となる英仏独の戦略を読み解き、その異同を探り、今後の日欧協力の可能性を展望する。
田中亮佑(防衛研究所)

変容する「人権・民主主義外交」-民主主義国の国際連携と日本のあり方
再びアメリカ外交の柱に据えられた「人権外交」。だが人権・民主主義は、世界的に退潮している。ポスト・トランプの国際社会で、どう規範を立て直すか、自由主義諸国の連帯は中・ロの攻勢に立ち向かえるか。その「変容」の本質をとらえ、日本のあり方も考える。
市原麻衣子(一橋大学)

資料・日米首脳共同声明
新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ

FOCUS◎加速するカーボンニュートラル

鼎談
気候変動外交が促すビジネス戦略の積極展開
2050年カーボンニュートラル、2030年までに温室効果ガス13年比46%削減。菅内閣が掲げた「気候野心」の目標に向けて、私たちは何を考え、何に取り組まなければならないか。外交とビジネスが交錯する新たな領域での戦略を問う。
高村ゆかり(東京大学)
吉高まり(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
小野啓一(外務省)

バイデン構想を左右する民主党内の合意形成
気候変動の国際潮流をリードするバイデン政権。国内でも野心的な2030年目標を掲げ、脱炭素に向けた政権構想は揃いつつある。
実現のカギを握るのは議会、特に民主党内の結束だが…。
上野貴弘(電力中央研究所)

欧州グリーンディールのインパクト
フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長の下で、一歩先んじた「経済・社会・環境」戦略を掲げる欧州。
その緻密な政策体系と、国際ルールづくりへの積極関与が、気候変動分野での欧州の存在感を高めている。
市川 顕(東洋大学)

対米外交をにらむ中国CO2排出削減の積極政策
バイデン新政権の環境問題への積極的関与のもと、気候変動問題は再び、国際政治の表舞台に躍り出た。各国は2050年削減目標と30年中間目標を競い、中国のグリーン技術の著しい伸びが注目される。世界の環境技術、産業構造の地殻変動は起こるか。
鄭方婷(ジェトロ・アジア経済研究所)

急展開する再エネ主力化とサーキュラー・エコノミー
インパクトあるCO2削減目標が次々に出される中で、カギを握るのは再生可能エネルギーの利用法だ。再エネのメニューと削減方法の組み合わせから、従来では考えられなかったCO2削減の可能性が生まれている。これは資源小国日本のチャンスでもある。
平沼 光(東京財団)

around the world

米軍撤退後のアフガニスタン情勢と和平への展望
登利谷正人(東京外国語大学)

イエメン紛争 和平に向けた細い道のり
村上拓哉(中東問題研究家)

エチオピアの連邦議会選挙とティグライ紛争のゆくえ
西 真如(広島大学)

カストロ家の支配続くキューバ
山岡加奈子(アジア経済研究所)

特別インタビュー
安倍外交7年8ヵ月を語る(連載・完)
官邸外交を支えた組織・人・言葉
安倍晋三(前内閣総理大臣)

◎トレンド2021

大規模衝突に向かわせたパレスチナの閉塞感
イスラエルによる東エルサレムでの強制退去や長期化するガザ実効支配、パレスチナ内部の統治の劣化、さらにイスラエルと接近するアラブ諸国など、パレスチナをめぐる内外情勢は悪化の一途をたどっている。激しさを増すイスラエル・パレスチナ対立の背景を探る。
立山良司(防衛大学校)

クーデターから4ヵ月 「革命」の曲がり角-ミャンマー政変と国際社会
クーデターに抵抗する市民に、軍は銃を向けた。実効支配を広げる軍に対し、少数民族を包含した「国民統一政府」が組織され、
正統性を主張する。解決法は「二者択一」ではない。仲介の動きも出る中、日本のミャンマー政策は再考を迫られる。
中西嘉宏(京都大学)

日本の北極政策と北極海航路-「エネルギー安全保障」と「航行の自由」の相克
ここ数年、国際社会の関心が集まる北極海航路。日本もロシアと協力してLNG開発への参画を進める一方、将来的には国際的な新航路としての期待も高まる。しかし、航行のルールをめぐる合意形成が不可欠だ。
金子七絵(参議院第三特別調査室)

「ウイグル問題」と関わり続けて
1990年代に留学生としてウイグル文化に触れ、2000年代半ばからは研究者としてウイグル人と交流を重ねる。
さまざまな立場の人たちと交錯しながら、「ウイグル問題」に関わり続けてきた筆者が、その道程を振り返る。
水谷尚子(明治大学)

連載

外務省だより

数字が語る世界経済29
新型コロナ・ワクチン 世界の接種率は17.6%
伊藤さゆり(ニッセイ基礎研究所)

外交極秘解除文書 連載1
1989年・天安門事件と冷戦終結前夜
55年体制に縛られた認識 「軽量宰相」の初外遊-8~9月 海部首相訪米、日米首脳会談
若月秀和(北海学園大学)

インフォメーション

キャリアの話を聞こう18
グルーバル・コモンズの視点から地球環境問題の解を見出す
石井菜穂子(東京大学)

ブックレビュー
小川浩之(東京大学)

いまを読む5冊
評者:
江守正多(国立環境研究所)
外山文子(筑波大学)

新刊案内

英文目次

編集後記

イン・アンド・アウト