「外交」 vol.35

35表紙岸田文雄 外務大臣
動き始めた東アジア近隣外交
   ―日本外交の一年を振り返る

インタビュー後記 日本外交「収穫」のとき
中西寛(本誌編集委員長)

◎日本外交の将来像を語る

経済最高のカギはTPPと地域創生の融合にあり
林芳正(参議院議員・自由民主党)
TPP交渉の妥結で、あらゆるモノやサービス、そして資金が国境を越えて動く時代に入る。国内市場が縮小する中、TPPの巨大な市場圏域を日本はどう有効に活用していくべきか。その挑戦は、国内政
                                         策としての地域創生の起爆剤にもなりうる。

日米同盟と沖縄を両立させる知恵を絞る
遠山清彦(衆議院議員・公明党)
平和安全法制により、新たな段階に入った日本の安全保障。法案の与党間協議をリードした遠山氏が、中国の膨張、普天間移設と日米同盟など、今後の懸案を読み解く。

企業と消費者が作る「持続可能な開発」
有馬利男(グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン代表理事)
グローバルな課題に取り組む主役は国家だけではない。企業も重要な担い手である。その活動は、単なる「社会貢献」を越えて、社会の新たな価値を生み出す動きと連動するはずだ。

緊急援助に関わる「作法」―体験的国際人材論
忍足謙朗(国連世界食糧計画前アジア局長)
国連世界食糧計画(WEP)最大のプロジェクトであるスーダンへの食糧援助。それを担った忍足氏が、ミッションを遂行するために行った「チームづくり」、国際機関や援助相手の動かし方から、危険で困難な状況に立ち向かう、新たな外交人材のあり方を問う。

特集◎2016年世界と日本を展望する

中国「改革のための強権」がもたらすひずみ‐習金平政権 集権化の背景
小嶋華津子(慶應義塾大学)
中国は、国政政治経済においてその影響力を強めつつある一方、内政においては難しい舵取りを迫られている。政権の存続と改革の断行を賭けて強権政治を創り出したものの、行き過ぎた言論封殺がもたらす政策立案の硬直化とチェック機能の喪失は、大同団結を要する息の長い改革の推進に負の影響をもたらすだろう。

蔡英文政権を試す「一つの中国」論‐台湾総統選後の東アジア情勢
松田康博(東京大学)
台湾の総統選挙・立法院選挙は、ともに民進党の圧勝に終わった。昨年11月の中台首脳会談からの「中台関係」をめぐる総統選ドラマは、蔡英文が訴えた「現状維持」の内実を問う第2幕に舞台を移す。そこでの鍵は、「一つの中国」を謳った「92年合意」の扱いとなろう。

戦略空間の拡大で価値高めるASEAN
   -「東アジア」「インド太平洋」の中心として

大庭三枝(東京理科大学)
昨年末に成立したASEAN共同体。さらなる統合への期待が高まる一方、人権問題や領土問題に効果的に対応できるかは未知数である。共同体の設立で何が変わるのか。日本はどのようにASEAN諸国と関わるべきなのか。

ミャンマー新政権 改憲への勝算
根本敬(上智大学)
昨年2月に実施された総選挙で大勝したアウンサンスーチー率いる国民民主連盟(NLD)であるが、これまで長く政権を担ってきた軍部の力は依然として強い。NLDはどのように軍部と関わり、目の前の課題に対応していくのか。

シリア紛争「終わりの始まり」が見えてきた
青山弘之(東京外国語大学)
泥沼化したシリア情勢は、独裁者アサドと民主化を求める民衆の「内戦」ではなく、欧米、ロシア、周辺国がさまざまに介入する「国際紛争」の様相を呈してきた。出口戦略の成功は、シリアにおける「当事者」としてアサド政権の許容と、「正当な」反体制派の選出にかかっている。

感情的選択と合理的選択のはざまで
  ‐混迷の米国大統領選が意味するもの

田中淳子(NHK)
今年11月にアメリカ大統領選挙が行われる。共和党では過激な発言で注目を集めるドナルド・トランプ氏が高い支持率を獲得しているが、それはオバマ政権への失望やいらだちを背景としている。

「機会主義的な大国」ロシアの実像
横手慎二(慶應義塾大学)
ウクライナ問題、シリア紛争をめぐり欧米との確執がつづくロシア。さらに資源輸出頼みの経済が、ロシア外交の形を規定している。機を見るに敏なロシア外交の今後を読み解く。

EUの憂鬱-欧州複合危機の行方
遠藤乾(北海道大学)
たびたび危機に見舞われ、崩壊が取りざたされるEU。だが、平和と連帯といの理想という「神話」から処断するのは、加盟各国の事情と思惑を見ない見方にすぎない。巨大権力装置EUをリアルに見つめ、混乱の先を展望する。

フランス同時多発テロ 欧州統合「深化」の逆説
渡邊啓貴(東京外国語大学)
ギリシャ問題や難民の大量流入に苦しむ欧州。EUはその結束を保てるのか。テロの対応に追われるフランスからの考察。

日本は難民の受け入れに厳しい国なのか
   ‐「100万人と11人」の背景

本誌編集部
シリア・イラクからの大量の難民が、中東の周辺国を越えて欧州にまで到達し、国際問題となっているが、それを受けて、日本の難民政策にも注目が集まっている。欧米と比較して特に受け入れ数の少なさを批判されるが、そもそも欧米と日本では、申請者の性格が大きくと異なることは、あまり知られていない。

低成長時代のアフリカ開発
      -TICADⅥ再スタート

平野克己(日本貿易振興機構アジア経済研究所)
アフリカは、低成長に向かう兆しを見せているが、多くのライバルが注目しているのも事実だ。日本もアフリカと共に発展してゆくために、アフリカ開発会議(TICAD)の変容が求められている。

「良き統治」によるテロ克服を
    ‐第2回ダカール国際フォーラムに出席して

西田一平太(東京財団)
後発途上国が多く集中するアフリカ。社会の不平・不満に付け入るテロ組織の浸透が懸念されている。安定した社会づくりを成し遂げるため、アフリカ諸国での取り組みが始まっている。

COP21 合意とエネルギー大転換の時代
高村ゆかり(名古屋大学)
先進国と途上国双方に温室効果ガスの抑制を義務付けたパリ協定が採択された。しかしその意欲的な内容の真価が問われるのはこれからだろう。世界のエネルギー情勢の転換を踏まえ、官民ともに意欲的な取り組みが待たれる。

FOCUS◎日米知的交流の最前線

日米政策対話の扉が開かれた
     ‐富士山会合の挑戦

野上義二(日本国際問題研究所理事長)
日米の外交サークルを代表する学者、官僚、政治家、財界人が集った「1・5トラック」の国際会議「富士山会合」。日米同盟と中国問題を中心に集中的な議論が重ねられた四日間の意義と今後の展望を、会議を主催した野上氏が語る。

ボストン・シンポジウム20年の歩み
   -関西経済同友会の挑戦

蔭山秀一(関西経済同友会)
関西経済同友会は米ハーバード大学とボストン・シンポジウムを開催し、幅広い分野について対話を重ねてきた。こうした民間外交の進展は日米の絆を強固なものとするであろう。

米国海軍大学に批判的思考を学ぶ
下平拓哉(防衛省海上幕僚監部、米海軍大学)
混沌とした世界において、日米同盟はアジア・タイへ尿地域の安全・安定に大きく貢献してきた。今後も湧出する解題に対応するため、日米同盟の最前線で働く人々の切磋琢磨は欠かせない。

連載

マンガをみれば世界がわかる
西川恵

海風陸風
辻上奈美江(東京大学)

マーケットの眼
伊藤洋一

見出しで学ぶニュース英語
徳川家広

キャリアの話を聞こう③
柳沢香枝(国際協力機構理事)

ブックレビュー
梶谷懐(神戸大学)

INFORMATION/外務省広報

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