Vol.71 Jan./Feb. 2022

Vol.71_TOP巻頭対談 2022年の日本外交を展望する
経済安全保障に不可欠な同志国とのハーモナイゼーション
林 芳正(外務大臣)
田中明彦(政策研究大学院大学)

特集◎2022年 世界と日本の選択

座談会
重層化する国際秩序と日本-キーワードで読み解く外交課題
米中が異なる秩序観を持ち、対立が構造化するなかで、人権、民主主義、経済安全保障などをめぐる外交領域が拡大している。多様なアクターが参画する新たなアリーナに日本は果敢に参入し、行動することが求められる。
市原麻衣子(一橋大学) 齊藤孝祐(上智大学)
佐橋 亮(東京大学) 鈴木早苗(東京大学) 田中淳子(司会・本誌編集委員)

日本が直面する安全保障環境と戦略見直しの諸課題
米中競争の激化や現状変更を企図する核武装国など、日本周辺の安全保障環境は急激に悪化している。安全保障のリソースを真に必要な分野に振り向ける、確実な分析と思い切った戦略的思考が必要だ。
村野 将(ハドソン研究所)

インド太平洋で深まる米中の相互不信-関係打開に特効薬はない
米中は競うようにインド太平洋地域へ資源を投入し、地域に一定の恩恵をもたらし得るが、やはりゼロ・サム的対立の意識は無視できない。困難な米中関係をいかに打開すべきかを考える。
パトリシア・キム(米ブルッキングス研究所)

人権侵害制裁法は効果があるか-米グローバル・マグニツキ-法の意義と批判
「人権外交」の一手段とされるマグニツキ―法は、人権侵害状況こそが国境を越えた脅威と捉え、ミャンマー、中国、サウジアラビアなどに適用される。制裁が対象国の行動変容をもたらすか疑問もあるなか、EUなどにも広がりを見せる。今後の展開はどうなる。
杉田弘毅(共同通信)

「制度性話語権」で2035年に向かう中国-制度をつくり、実行させる国家パワー
2020年、中国は鄧小平が掲げた社会主義長期戦略の小康状態到達を宣言、共産党一党支配に自信を深める。自国の利益や価値体系に沿ったシステム構築、すなわち作られた制度に埋め込まれたディスコースパワー-制度性話語権こそが、中国の原動力となる。
加茂具樹(慶應義塾大学)

台湾を揺さぶる「チャイナ・ファクター」
中国は台湾に対して、フェイク・ニュースの拡散や経済的圧力を駆使、日常的な統一工作を通じて統一容認の世論や政治勢力の形成を狙う。民主主義を守りながら対抗するには限界があり、いかに台湾を孤立させないかが焦点となる。
石田耕一郎(朝日新聞)

ASEAN「民主主義問題」の複層性
フィリピン、タイなどで強まる権威主義的政策運営。地域共同体ASEANの軸として長年議論の的だった「民主主義か内政不干渉か」というテーゼは、政権の安定をめぐる国内情勢優先に取って代わられた。「民主主義対権威主義」の構図では読み切れない。
青木まき(ジェトロ・アジア経済研究所)

対談・ヨーロッパは国際秩序の担い手たるか(上)
ウクライナ危機における欧州の責任と戦略
ヨーロッパはなぜ危機を止められなかったのか、ロシアに対し厳しい対応を回避し続けた経緯を踏まえウクライナ、そしてロシアはどう動くのか。
合六 強(二松学舎大学)
東野篤子(筑波大学)

ロシアがNATOに強硬姿勢を取る理由
ウクライナ情勢が緊迫するなか、ロシアの行動原理とは。旧ソ連諸国を勢力圏にとどめたい安全保障の理論と、ナショナリズムに体制維持を頼る国内政治の論理が交錯し、「カラー革命」の連鎖への恐れも垣間見える。
溝口修平(法政大学)

カザフスタン動乱にみる国民の不満と権力闘争-ナザルバエフ体制解体の試練
年明け早々にカザフスタンで大規模な武力衝突が発生した。その背後には、指導者間の権力闘争、ロシアの思惑も絡む。そして院政を敷いてきた前大統領を中心としたカザフスタンの政治・社会のあり方そのものが問われている。
宇山智彦(北海道大学)

北京冬季五輪外交ボイコット 欧州の思惑
中国国内の人権問題などを理由に米国が呼びかけた2022年北京冬季オリンピックへの外交ボイコット。積極的なイギリス、慎重なフランス・ドイツ、中国と経済的結びつきを強める旧東欧諸国の一部と、欧州各国の思惑は、それぞれ分かれる。
国末憲人(朝日新聞)

岐路に立つ中南米の民主主義-弱体化する民主主義擁護のメカニズム
米州機構には米国の中南米への関心低下、根強い反米感情を背景に、権威主義化する政権から離脱をちらつかせた揺さぶりがかかる。地域固有の共同体も、左派と右派の対立があり、民主主義はもはや中南米の求心力たりえないのか。
浦部浩之(獨協大学)

駐日大使は語る1
エネルギーから宇宙まで拡大続ける日・UAE関係
シハブ・アハマド・アル・ファヒーム(駐日UAE大使)

政治化する石油市場 不安定化の構図
2020年5月のOPECプラスによる協調減産から始まった石油の価格上昇は、世界的な物価高をもたらし、世界的に懸念の声が高まっている。生産国と消費国の対立に、世界的な脱炭素化潮流が加わり、混とんとする石油市場の動向を読み解く。
小山 堅(日本エネルギー経済研究所)

脱石炭に向けた日本の戦略と課題-COP26の潮流を受けて
国際的に加速する脱炭素の潮流の中で、日本政府・企業の対応は依然として不十分だ。必要なのは「脱石炭」への明確なコミットと、カーボンプライシングを含めた大胆な制度設計だ。COP26を現地で取材した筆者が、先行する世界とのギャップを鋭く指摘する。
堅達京子(NHKエンタープライズ)

コロナ危機における「移動の自由」と水際対策
新型コロナの感染拡大は、グローバル化と不可分な「人の移動」に試練を突きつけた。もはや「鎖国」は不可能な時代。適切なリスク評価に基づく機動的な国境管理が必要だ。
相良祥之(アジア・パシフィック・イニシアティブ)

around the world

ミャンマーとアフガニスタン 国連大使をめぐる攻防
隅 俊之(毎日新聞)

ビジネス視点から見たアフリカ開発-TICAD8にむけて
椿 進(ビジネス・ブレイクスルー大学)

続・特集◎2022年 世界と日本の選択

現状維持を伝える北朝鮮年頭報道
恒例だった金正恩総書記の「新年の辞」は2020年から「労働新聞」を通じて朝鮮労働党の方針を伝えるスタイルに変化した。金総書記が一歩引いた意味は何か。21年初頭の方針をそのまま続ける理由とは。
礒﨑敦仁(慶應義塾大学)

◎トレンド2022

大統領選選挙延期に揺れるリビア
「アラブの春」以降、混乱と内戦が続くリビア。2020年10月の停戦合意を機に、国家統合を目指す大統領選・議会選への機運が高まったが、昨年12月、実施直前で延期が表明された。選挙の実現に向けて「有力候補」の動向が今後のカギを握る。
小林 周(在リビア大使館書記官)

ポスト・パンデミック 移民立国カナダの選択
コロナ禍で各国の受け入れが減少するなか、カナダは積極的な受け入れ姿勢を見せる。経済発展を移民が担うという国民的コンセンサスは、精巧な受け入れプログラムにより醸成されている。先進国の課題、人口の減少と低成長を解決できるか。
川村泰久(駐カナダ特命全権大使)

文化としての漫画 国境を越えた表現との出会い-日本国際漫画賞15回の歩みを振り返る。
日本のポップカルチャーを代表するコンテンツとして世界的に評価の高い漫画。その漫画を通じて文化外交を展開すべく、15年前に創設された日本国際漫画賞。漫画界の重鎮で、創設からかかわった里中満智子氏が、その意義とこれからの展望を語る。
里中満智子(マンガ家)

東京栄養サミット2021開催
世界の飢餓と肥満を解決する
世界の10人に1人が飢えと低栄養で苦しむ一方、3人に1人が過栄養や肥満の状態にある。この両極化した状況を克服するために、近代日本の経験を「栄養政策」として世界に提示し、共有する。新たな国際貢献のあり方を、栄養学の視点から考察する。
中村丁次(日本栄養士会)

「表の顔」を演じ切る覚悟-追悼・海部俊樹
白鳥潤一郎(放送大学)

連載

数字が語る世界経済33
責任投資原則(PRI)
署名機関の運用資産残高は121.3兆ドル
伊藤さゆり(ニッセイ基礎研究所)

外交極秘解除文書 連載5
1989年・天安門事件と冷戦終結前夜
若月秀和(北海学園大学)

インフォメーション

ブックレビュー
小川浩之(東京大学)

いまを読む5冊
評者:佐藤俊輔(國學院大學)

著者に聞く 大著の言い分
山口昌子(ジャーナリスト)

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編集後記

イン・アンド・アウト