Vol.62 Jul./Aug. 2020

Vol62_page_0001巻頭インタビュー
感染抑制のカギは加盟国との信頼醸成 ―新型コロナWHOの最前線から
葛西 健(世界保健機関西太平洋地域事務局長)

特集◎コロナで変動する国際秩序

対談 新しい社会契約 問い直される国家
新型コロナのインパクトは、先進国における国家と社会の関係、そして国際秩序を大きく揺り動かしている。「社会契約」と「米中デカップリング」を軸に、コロナ後の世界と日本を読み解く。
白石 隆(熊本県立大学)
田所昌幸(慶應義塾大学)

 

感染症との闘いを左右した政治と科学のバランス
政治リーダーがどの程度科学を信じているか。政治・科学連携の政策決定モデルがあっても、信頼関係がなければコロナ対策は失敗した。感染症を収束させ、経済負担を小さくしたのは、政治と科学が共同で目標に向かった国だった。
鈴木一人(北海道大学)

世界に向けた日本の保健 ・ 医療イニシアティブ
新型コロナの世界的な収束に向けて、今後カギを握るのは、途上国、なかでもアフリカにおける保健・医療体制の整備だろう。それには国際社会の共働が不可欠だ。日本は知恵と経験を生かして、有効性の高い独自の支援をめざすべきである。
北岡伸一(国際協力機構)

特別寄稿 ルワンダからのメッセージ
国際社会に求めたい明確な関与と連帯―アジア諸国の役割に期待
厳格な感染抑止策を講じ、被害を最小限に抑え込んだルワンダ。しかしこれからの復興には、世界からの協力が不可欠だ。国際社会には、G20緊急宣言の内容を確実に履行すること、そして対等な目線で相互に敬意を払う真の連帯を求めたい。
チャールズ・ムリガンデ(元駐日ルワンダ大使)

経済の長期停滞で進む保護主義とサプライチェーン再編
一九三〇年代の世界大恐慌は世界を保護主義の応酬へと至らせた。コロナ危機で歴史は繰り返されるのか―。米中対立やサプライチェーンの再編から、コロナ危機の政治経済への影響を考える。
伊藤元重(学習院大学)

感染症対策で問われる個人情報保護-「プライバシーと公」はデザインできるか
感染拡大防止策とプライバシーのバランスをどうする?各国やEUのプライバシー規制ばかりではなく、アプリ配布の媒体となる“GAFA”による「テクノロジーによる法」も大きな課題だ。両者のバ ランスをどうデザインするかが、いま問われる。
湯淺墾道(情報セキュリティ大学院大学)

課題多いワクチン ・ 治療薬の開発
コロナウイルス感染症の病態はどうか、対コロナウイルス・ワクチンと治療薬は、いつどのように開発できるのか。研究・開発の最新情報から見えてきたのは、世界の協調なしに対抗は不可能だという事実だ。
中村幸司(NHK)

コロナ禍によるグローバル停戦は可能か
世界の五〇もの国や地域で、今も内戦が続いている。医療制度が崩壊した地域でのコロナ蔓延が危惧される中、グテーレス国連事務総長は「グローバ ル停戦」を提案。イエメン、 アフガニスタン、南スーダンの状況は厳しく、各国が連携しての「人間の安全保障」が今こそ必要だ。
東 大作(上智大学)

スウェーデンの対コロナ独自戦略
高齢者に外出自粛を、若者は経済活動に。リスク群の分類で集団免疫を狙う独自の戦略。高齢者の死者が増えても、ひるまない。その理由は「高負担・高福祉」維持困難への悩みと、解決策へ の国民理解にもあった。
清水 謙(立教大学)

国軍の「調整権」をめぐる政治闘争-ブラジル憲法解釈による大統領指導力強化は失敗に
感染拡大に苦しむブラジル。極右の政権支持者からはボルソナーロ大統領の権限強化をめざす新たな憲法論が展開された。しかしその顛末には、大統領の方針転換がみてとれる。
二宮正人(サンパウロ大学)

危機に台頭するコンパクト ・ デモクラシー
コロナは各国の政治制度の矛盾をさらけ出した。米国と中国では覇権主義の蹉跌が露わになり、ヨーロッパではポピュリズムが退潮している。小規模国家や自治体の成果を分析すると、コンパクトな民主主義の可能性が見えてきた。
上久保誠人(立命館大学)

緊迫の武漢 邦人帰国に取り組む-湖北省邦人退避オペレーションの内幕
今年一月、新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大した中国武漢。中国政府がロックダウンの決断を下すと、日本政府はチャーター便での邦人帰国をいち早く実現させた。現地でオペレーションを指揮した植野・前在中国大使館公使が描く奮闘記。
植野篤志(外務省国際協力局)

日本政府は武漢以外でもミッションを遂行 世界各地における邦人出国支援
森 和也(外務省領事局)

Around the World

韓国文政権 統一政策再活性化の背景
澤田克己(毎日新聞)

BLM運動 歴史への問い、未来への射程
矢口祐人(東京大学)

FUCUS◎先鋭化する米中対立

不信深めるアメリカの対中姿勢
アメリカの対中強硬政策は、 トランプ大統領による「取引の一環」を超えて、本格的なものになった。コロナ禍は政権幹部たちの対中姿勢を硬化させ、政界・社会全体に大きく不信感が広がっている。「戦略的競争時代」をどう秩序立てるか。
佐橋 亮(東京大学)

「バイデン政権」で対中政策はどう変わるか
バイデン政権が誕生したら、オバマ時代の対中穏健外交が繰り返されるのか。トランプ政権と、何が違うのか。前・駐香港米国総領事を務め、民主党の外交ブレーンでもあるカート・トン氏がバイデン氏の対中外交を論ずる。
カート・W・トン(アジア・グループ(LLC)パートナー)

国際秩序をめぐる競争を激化させる中国-強硬化をもたらすその自己認識
「一〇〇年に一度の大変化」を活かすべく、米国の覇権縮小後のリーダシ ップをアピールし、中印紛争では強硬な姿勢を見せるなど、あらゆる面で競争的姿勢を露わにする中国。その「視界」には何が見えているのか。
山口信治(防衛研究所)

長期化する 「習近平時代」 の論理と戦略-変わらない「和平演変」への恐れ
協調的な対外政策で輸出志向型の経済成長をめざし、豊かさを獲得することで共産党支配の正統性を高める―。鄧小平から江沢民、胡錦濤へと続いたこの路線は、終わりを告げた。内外の情勢が厳しさを増すなか、中国共産党が模索する新たな論理と戦略とはなにか。
鈴木 隆(愛知県立大学)

香港危機は世界の危機へ-「国家安全維持法」成立過程とそれがもたらすもの
スピード成立・施行された香港国家安全維持法。香港基本法によらず「北京」が直接立法する異例ずくめの制定過程は、中国政府の強い危機感と香港民主主義体制へ の強い不信がにじんでいる。民主化運動のゆくえは、世界の対応は?先行きは全く不透明だ。
倉田 徹(立教大学)

国際生産システムをみる 「眼」 の刷新を-グローバル・バリューチェーンとグローバル・サプライチェーン
近年、国際関係の緊張が高まったことを背景に、国家が経済に介入する傾向が強まっている。企業の国際戦略が政治に大きく左右される現在、GVCの視点から生産システムを捉えることが必要だ。
猪俣哲史(ジェトロ・アジア経済研究所)

連載

インフォメーション

数字が語る世界経済25
伊藤信悟(国際経済研究所)

キャリアの話を聞こう17
シントロン大久保泉(米国大統領外遊先遣アドバイザー)

ブックレビュー
大庭三枝(神奈川大学)

いまを読む5冊
評者:
松井孝太(杏林大学)
明石純一(筑波大学)

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編集後記

イン・アンド・アウト