Vol.61, May/Jun. 2020

Vol.61_hyoshi_Vol2巻頭インタビュー
感染症対策「森を見る」思考を — 何が日本と欧米を分けたのか
押谷 仁(政府新型コロナウイルス感染症 対策専門家会議委員)
※本記事7頁のグラフにおいて、ロシアの人口10万人当たりの死者数に誤りがありました。読者の皆様にお詫び申し上げますとともに、グラフを修正したものを再掲載いたします。(6月9日)

海外向け政策論調発信ウェブ誌「Discuss Japan – Japan Foreign Policy Forum」に英訳・中国語訳が掲載されました。(6月16日)
英語訳
中国語訳

特集◎新型コロナと闘う

新型コロナで岐路に立つ 国際保健協力
一世紀以上の歴史を持つ感染症への国際協力態勢。トランプ政権は公然とWHOに反旗を翻すが、 果たして世界はそれで、感染症に立ち向かえるか。 国際協力の歴史を振り返り、WHOのあり方も 問い直すことで喫緊の危機を克服すべきだ。
詫摩佳代(東京都立大学)

感染症有事への体制整備を急げ -政治の現場から見えてきた課題
未曾有の感染症への対応に追われるなかで、 さまざまな課題が見えてきた。政治のリーダーシップ、 医療体制の整備、国と地方自治体の関係、 感染症有事法制の必要性……。 国際保健行政のプロフェッショナルが、包括的に問題を提起する。
武見敬三(参議院議員)

変わるライフスタイル、分裂する世界-ポスト・コロナの世界を展望する
新型コロナウイルスの感染拡大は、 世界の政治経済だけでなく、人々の生活様式にまで影響を及ぼしている。
何がどこまで変わるのか。 われわれは「ポスト・コロナ」の時代に備えなければならない。
伊藤隆敏(コロンビア大学)

「コロナ後」のグローバル・サプライチェーンと中国
一月二三日の武漢など中国五都市封鎖により、サプライチェーンの「中国集中リスク」が顕在化した。世界の企業は生産拠点の複数化などの手段を講じるが、中国の経済規模や生産ノウハウ蓄積の魅力もあり、グローバル経営は効率と安全の新たな均衡を迫られる。
伊藤信悟(国際経済研究所)

中国・「抑制」から「感染症外交」へ — 歴史的視座から読み解く
S A R S 以後、医療と公衆衛生多額の資金を投入した 中国は、コロナ感染爆発の制御を何とか成功させた。「医療崩壊」の背景は、実は高度医療の普及にあった。一帯一路政策には感染症対策の輸出も含まれており、制圧次第では国際的プレゼンスの拡大も予見できる。
飯島 渉(青山学院大学)
※編集部の誤りで、本記事のタイトルが表紙・目次に異なって記載されました。読者の皆様および筆者にお詫び申し上げますとともに、以下に訂正いたします(6月9日)。
(誤)中国「抑制」から「感染症外交」へ
(正)中国・「抑制」から「感染症外交」へ


台湾のコロナ対策成功で変わる 台湾海峡の力学

世界から注目を浴びる台湾の新型コロナ対策。そこには高い医療・公共衛生水準に加え、中国への強い不信感と危機意識があった。あたかも国民戦争のようにウイルスと戦う台湾。緊密化する米台に、中国はどう対応するのか?
松田康博(東京大学)

感染症が浮き彫りにした EUの「死角」
大規模な流行を許した国と被害を抑え込んだ国。欧州の南部と北部の間で生じた「感染格差」は、復興に向けたEUの支援を複雑にしている。ただ、EU内の対立劇は一種の芝居にすぎない。真の課題は各国に内在するポピュリズムにある。
国末憲人(朝日新聞)

分断の矛盾噴き出すアメリカ — 政治と科学、格差の視角から
トランプ政権の専門家軽視・経済優先の焦りが 世界一の感染者・死者という結果を招いたのか。米国にひそむ、経済的・政治的・社会的分断が、それぞれのセクターから見える世界像を歪ませ、感染収束を遠くしているのではないか。
松井孝太(杏林大学)

◎コロナ禍の世界

韓国 「徹底監視で抑え込み」の光と影
SARSやMERSの経験を教訓に、「公衆保健医師」の大量投入や ICT技術も用いた抑え込みは成功したが、 国民の権利を犠牲にしたとの批判も強い。感染症対策と人権とのバランスが問われる。
豊浦潤一(読売新聞)

北朝鮮 隔離措置優先で動揺なし
「陽性患者はいない」とする北朝鮮の発表は、疑わしきはまず隔離する感染対策による。軍事訓練の映像などから、伺い知ることの難しい感染の状況や北朝鮮社会への影響を読み解く。
宮本 悟(聖学院大学)

東南アジア さらなる域内協力深化の契機となるか
ASEAN諸国は、おおむね感染を抑えるのに成功しつつある。SARSの教訓が活きる一方、外国人労働者への対応ミスが感染爆発につながった。域内協力で封じ込め、世界経済回復の起点となるか。
小井川広志(関西大学)

インド 試される「強い指導者」と国民
いち早く厳しい封鎖措置に踏み切ったモディ政権。だが、宗教行事や市民生活の密集が解消できず、経済活動を再開し苦境をしのぐジレンマに陥る。国民の不満は溜まり、政権運営が揺らぐ可能性も。
小峰 翔(読売新聞)

イラン 制裁とモスク再開に逡巡続く
シーア派聖地がクラスター化か。ラマダン後に 聖地の聖廟再開に踏み切るか苦悩するローハニ政権。米経済制裁が膠着し医薬品の調達にも悩む中、中国の存在感が大きくなってきている。
杉崎慎弥(朝日新聞)


ロシア 油価下落が重なり経済危機は深刻化

厳しい外出制限でコロナ封じ込めを目指すが、休業補償を企業に押し付けるなど、プーチン政権の経済対策への国民の不満は強い。さらに原油価格の下落が追い打ちをかける。
大前 仁(毎日新聞)

アフリカ コロナが露わにしたアフリカの「脆弱性」
全土でロックダウンが続く南アフリカでは、貧困層の生活が困窮し、略奪も起きている。五月から経済活動の一部再開へ踏み出したが、世界の格差はそのままアフリカに映される。
別府正一郎(NHK)

ブラジル 「感染否定」ボルソナーロ大統領の崖っぷち
感染をネグレクトし続けるボルソナーロ大統領。見かねた州知事や市長が対策に乗り出したが、貧富の差や地域格差で感染は拡大の一途。 財政赤字も膨らみ、政権基盤をも脅かしている。
岡田 玄(朝日新聞)

オセアニア 際立つスピードと政府の存在感
感染の抑制に成功しているオセアニア。 蔓延に先んじた水際対策と行動制限が奏功したが、その原動力は首相のリーダーシップにあった。オーストラリアとニュージーランドにその例を見る。
小宮理沙(NHK)

トランプ対バイデン 接戦の構図を読み解く
11月のアメリカ大統領選挙の構図が見えてきた。なぜ民主党はバイデンを選んだのか。トランプとの対決で何が問われるのか、副大統領候補はどうなる。ワイルドカード「新型コロナウイルス感染」は、選挙戦にどのような影響を与えるのか。
前嶋和弘(上智大学)

Around the World

発効50年 NPTの課題
戸﨑洋史(日本国際問題研究所)

FOCUS◎日米同盟 深化への課題

日米「一体化」で問われる日本の役割
日米安保条約が発効して六〇年。時代に合わせて変容してきた日米同盟は、中国の台頭や安全保障環境の変化とともに、新しい局面に入った。いま求められる協力の姿とは。
小野寺五典(衆議院議員)

良好な対米・対中関係を外交資産に-米中対立時代の日本の役割
安保条約締結から六〇年が経過した現在、日本の安全保障環境は大きく変わっている。米中対立という大きな潮流のなかで、米国とも中国とも良好な関係を持つ日本の存在意義は大きい。
マイケル・オハンロン(ブルッキングス研究所)

Q&A
日本の安全保障と日米同盟
武田康裕(防衛大学校)

追悼・岡本行夫氏
現場主義を貫いた「熱き外交官」
田中 均(日本総研国際戦略研究所)

日韓協力の推進と共感の拡大 — ある日本人外交官の問いを手がかりとして
日本と韓国の間に横たわる、感情的に埋めがたい溝。四〇年前に駐韓大使を務めた須之部量三は 日韓関係の良好さが日本の成長の「リトマス試験紙」と述べた。いま、価値や社会的課題の共有こそが 歴史認識をめぐる「感情隔差」克服の一歩となる。
小林聡明(日本大学)

連載

数字が語る世界経済24
伊藤さゆり(ニッセイ基礎研究所)

外交最前線
外交官から学園長へ 地方にこそ必要なSDGs教育
山田基靖(学校法人摺河学園)

ブックレビュー

いまを読む5冊
評者:
佐竹知彦(防衛研究所)
森 靖夫(同志社大学)

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編集後記

イン・アンド・アウト