vol.55 May./Jun.2019

表紙2
巻頭インタビュー
MICEで示す大阪の実力と可能性

吉村洋文(大阪府知事)

特集◎G20大阪サミットが描く世界像
6月28、29日に行われるG20大阪サミット。米中間の経済摩擦が激しさを増す中、世界経済のリスクを回避しつつ、グローバルな課題にどう取り組むのか。議長国日本のリーダーシップを問う。

米中対立と多国間主義の試練
多極的枠組みでの問題解決を志向したG20は、二極化と多国間主義の矛盾にさらされてきた。国際政治の極構造の変化を振り返り、米中二極対立構造下のG20の役割を考える。
山本吉宣(新潟県立大学)

《全文公開》対談・多国間主義は再生するか——日本の役割を問う……冨田浩司(G20サミット担当大使)/田所昌幸(慶應義塾大学教授)
世界的な金融危機への対処から生まれたG20だが、危機終息後も存在感を示しつつある。世界のGDPの8割を占める国々が集まるフォーラムで、議長国日本はいかに会議をリードするか。シェルパを務める冨田氏と、国際政治経済の碩学・田所氏が語る。

国際金融のルールづくりと日本のイニシアチブ
2008年金融危機の後、「非常時」の政策協調の役割を果たしたG20は、「平常時」のいま、高齢化、デジタル課税の対処などによって「持続可能な成長」のための建設的な議論をグローバルに行えるかが問われている。
浅川雅嗣(財務省財務官)

デジタル・エコノミーの地政学 情報通信の経済秩序と「自由と信頼」
いまや世界中の既存の枠組み全てに変容を迫るデジタル・エコノミー。その最先端にはどんな問題があるのか。米・中・欧それぞれ異なる秩序の立て方を探り、日本の役割を含め今後のあり方を問う。
横澤誠(京都大学客員教授)

《全文公開》世界の女性の視点をG20に ネットを活用した多国間協議が示す可能性……治部れんげ(ジャーナリスト)
さまざまな制約に悩む世界の女性たちの「壁」を、IT技術が取り払った。3月にWoman20(東京)で実践された、ジェンダー主流化戦略を深化させるための多国間協議に、新しい合意形成の形をみる。


2030年に向け持続可能な開発目標(SDGs)を達成するためには、科学技術イノベーションを加速させることが不可欠だ。日本が構想する「ソサイエティ5.0」の社会像と連動させ、国際社会の取り組みを主導したい。
中村道治(科学技術振興機構顧問)

《全文公開》G20大阪サミット首脳の横顔

TREND2019
スリランカ・イースター同時テロの国内的要因
政情が安定していると思われていたスリランカでの大規模テロ。その背景にはムスリムも含めた国内融和と、政治がテロ対策に機能不全の国内問題が。最新の情報をもとに分析する。
荒井悦代(アジア経済研究所地域分析センター動向分析研究グループ長)

インドネシア大統領選挙「二極化」の虚実
イスラム「冒涜」事件をきっかけに、動員と非難の応酬が続いた大統領選。選挙結果は宗教的傾向によって、地域ごとに極端に割れた。国民の「二極化」はいつまで続くのか。
見市健(早稲田大学教授)

ネタニヤフ続投のイスラエルと中東和平
総選挙勝利で、最長の在任期間となったネタニヤフ首相が誇る「強さ」の裏では、その支持基盤「超正統派」の変容なども見られる。連立のゆくえは、そしてヨルダン川西岸地区ユダヤ人入植地併合問題など、中東和平はどうなるか。
江﨑千恵(防衛大学校准教授)

現地報告 イラクと南スーダン・平和構築の課題
国民和解に配慮したイラク総選挙。一度挫折し、大きな犠牲を出した南スーダン和平。常に当事者の中に入って和平を模索してきた筆者が、両国の最新の動きを現地で探り、今後の和平の方向と日本の貢献について考える。
東大作(上智大学教授)

FOCUS◎流動化する北東アジアの政治力学
緊急寄稿 日米韓を揺さぶる北朝鮮ミサイル発射再開
5月に発射された北朝鮮の弾道ミサイルは、北東アジアの安全保障環境に大きな影響を与えかねない。「外交戦」に注目が集まる中で、後景化しつつある北朝鮮の軍事的脅威の内実を、改めて考察する。
村野将(ハドソン研究所研究員)

米中台関係に渦巻く新たなマグマ——「台湾関係法40年」から考える
米国大統領に台湾への関与を義務付けた「台湾関係法」は大陸中国からの防波堤だったが、米中台の距離感は、その時々で変化している。近年強まる中国の圧力と、来年の米・台トップ選挙に向けた思惑を探る。
黄偉修(東京大学助教)

「蜜月」だからこそ厄介な日米貿易交渉
早期合意を迫る米国は脱TPP後の不利に焦る。日米「二つの選挙」が絡む神経戦の中で、米中・米欧と並行して進む交渉は、「禁じ手」をめぐる攻防が不可避だ。首脳外交への望みは。限界はどこにあるのか。
菅野幹雄(日本経済新聞ワシントン支局長)

《全文公開》「盧武鉉越え」迫る文在寅政権の民族主義 自縄自縛に陥る対日政策……箱田哲也(朝日新聞論説委員)
南北統一の願いを政策の推進力とした文在寅政権。シンガポール米朝首脳会談後は不調に陥り、トランプ大統領だのみの米国や日本との関係が行き詰まりを見せている。関係改善はどこからどのように進めるべきか。

特別企画◎
歴代外務次官が語る平成日本外交史4
野上義二(次官在任2001~2002)
二一世紀見据えた沖縄サミットの先進性
9・11で凄みを見せた小泉首相の決断

薮中三十二(次官在任2008~2010)
北朝鮮核合意の好機を逃した六者会合
「政治主導」時代の生還関係を模索

連載

数字が語る世界経済
伊藤さゆり(ニッセイ基礎研究所主席研究員)

《全文公開》ゴルゴ13が教える海外安全対策7 オフィスも狙われる! 「三つの防衛線」で対策しよう!

アラウンド・ザ・ワールド
なぜイタリアは「一帯一路」に先んじて参加したのか
伊藤武(東京大学教授)

ポピュリズム政党の伸長を押しとどめたスペイン総選挙
武藤祥(関西学院大学教授)

ウクライナ・タレント大統領誕生で何が変わるか
服部倫卓(ロシアNIS経済研究所副所長)

キャリアの話を聞こう
国際機関で働こう! 国際機関で働く日本人職員を増やす
紅谷明(外務省国際機関人事センター課長補佐)

ブックレビュー
梶谷懐(神戸大学大学院教授)

外務省だより
JAPAN HOUSEフォーラム2019

インフォメーション

外交論文コンテスト審査結果発表

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